賃金未払いは珍しいことではない

雇用労働部の労働ポータルが公表した2025年確定統計では、賃金未払い額は2兆679億ウォン被害労働者は26万2,304人だった。2026年の月次値は重複集計額を除く新基準のため、過去年次値と単純比較してはならない。

数字が語ることは一つ — 未払いは個人の例外的な不運ではなく、法が定めた公式の救済手続きがすでに整っている、ありふれた被害だということだ。本記事はその公式手続きを順に整理する。

まず法が定める基準

  • 金品清算14日: 勤労基準法第36条により、事業主は退職日から14日以内に賃金・退職金など一切の金品を支払わなければならない(当事者合意で延長可)。この期限を過ぎれば未払いだ。
  • 賃金債権の消滅時効3年: 賃金を請求できる権利は3年間維持される。ただし時間が経つほど証拠確保と回収は難しくなるため、早く動くほうが有利だ。
  • 常習未払いへの制裁強化: 2025年10月23日施行の改正勤労基準法は、常習未払い事業主への信用制裁・政府支援制限に加え、故意・常習の未払いに対して労働者が未払い額の最大3倍以内の損害賠償を請求できる道を開いた。

Step 1 — 証拠の確保

未払いを疑った当日、次の7点を1つのフォルダに集めよ。

項目入手先
労働契約書のコピー入社時の PDF・紙
直近6か月の給与明細会社の人事システム・メール
振込通帳の取引履歴銀行アプリ → PDF 出力
出退勤記録社内システム・ドアロック・モバイル GPS
事業主との賃金関連メッセージKakaoTalk・Slack・メール → スクショ + 原本バックアップ
証言できる同僚リスト後の陳情・訴訟の参考人
就業規則・社内規定社内掲示板・共有ドライブ
フォルダは クラウド + ローカル + 外付け USB の三重バックアップ。会社のアカウント・端末にしか置かないと、退職時にアクセスを失う。労働契約書がなくても、振込履歴・出退勤記録・メッセージで労働の事実を立証できるので、諦めないこと。

Step 2 — 書面請求(内容証明)

賃金未払い請求の内容証明を書留で送る。

  • 発送: 郵便局窓口またはインターネット郵便局
  • 宛先: 事業主の本名+事業所住所(個人事業主) / 法人登記住所(法人)
  • 本文: 未払い賃金の算定内訳 + 支払請求 + 支払期限(7~14日を推奨)

内容証明自体に強制力はないが、「事業主が明示的に通知された時点」を文書で立証できる。必須の手続きではないため、事業主との対話が不可能な状況なら飛ばして Step 3 に進んでよい。

Step 3 — 労働庁への陳情

事業所を管轄する地方雇用労働庁(支庁)に陳情を提出する。未払い救済の中心手続きだ。

経路方法
オンライン雇用労働部 労働ポータル(labor.moel.go.kr)民願申請 → 賃金未払い陳情
訪問事業所管轄の地方雇用労働庁 民願室
電話相談雇用労働部 顧客相談センター 局番なし 1350
受理後の流れは次のとおり。
  1. 勤労監督官の調査 — 陳情人と事業主を呼び、事実関係を調査する。Step 1 の証拠一式と未払い額算定表(月給・手当・退職金を分離)を持参。
  2. 是正指示 — 未払いが確認されれば、監督官が事業主に支払いを指示する。この段階で支払われて終結する事件も多い。
  3. 検察送致 — 事業主が是正指示に従わなければ、勤労基準法違反として立件され検察に送致される(刑事処罰の対象)。
  4. 「未払賃金等・事業主確認書」の発給 — 調査で未払いが確認されれば発給を受けられる。この書類が次の段階(簡易代払金・訴訟)の鍵となる。

Step 4 — 簡易代払金(政府が先に支払う)

事業主が最後まで支払わなくても、賃金債権保障法により 政府が未払い額の一部を事業主に代わって先に支払う 制度がある。

制度要件上限
簡易代払金倒産認定手続き不要。「未払賃金等・事業主確認書」(または確定判決)に基づく最終3か月分の賃金700万ウォン + 最終3年間の退職金700万ウォン、合算で最大1,000万ウォン
倒産代払金事業主の倒産(破産・回生など)認定時年齢帯別の月額上限を適用
簡易代払金は勤労福祉公団に申請し、政府が先に支払った後、事業主に求償する。上限を超える未払い額は訴訟などで別途請求する必要がある。

まず申請期限を確認する。 未払確認書ルートでは、原則として退職翌日から1年以内に陳情を提起し、確認書発給日から6か月以内に代払金を請求する。確定判決ルートでは、退職翌日から2年以内に訴訟等を提起し、判決確定日から1年以内に請求する。在職者・事業主の要件は別なので、案件ごとに労働ポータルの最新要件を確認する。

Step 5 — 無料法律救助(法律救助公団 132)

未払い額が簡易代払金の上限を超える場合や民事訴訟が必要な場合も、費用の心配から始める必要はない。

  • 大韓法律救助公団 — 局番なし 132: 未払い当時の 最終3か月分の月平均賃金が400万ウォン未満 の労働者(韓国在住の外国人を含む)は、賃金・退職金請求訴訟について、訴状作成から訴訟代理まで 無料の法律救助 を受けられる。
  • 申請: 電話(132)・公団ホームページ・支部訪問。「未払賃金等・事業主確認書」と身分証を持参。
  • 留意: 敗訴した場合、相手方の訴訟費用は支援範囲に含まれない。

労務士・弁護士を私的に選任することも可能だが、まず上記の公的制度を確認するのが順序だ。

よくある5つの落とし穴

落とし穴結果
「来月には払う」を信じて3か月待機メッセージ削除・同僚転職で証拠が弱る
退職前に証拠を確保しない退職翌日から社内システムへのアクセス断
KakaoTalk を「整理」と称して削除最も直接的な証拠の消失
口頭で和解、合意書を作らない再不払い時に振り出しへ
簡易代払金・132無料訴訟の制度を知らずに諦める受け取れるはずの金銭を時効内に請求できない

公式窓口一覧

窓口連絡先用途
雇用労働部 顧客相談センター局番なし 1350未払い相談・陳情手続き案内
雇用労働部 労働ポータルlabor.moel.go.krオンライン陳情・未払い統計
大韓法律救助公団局番なし 132無料法律相談・未払い訴訟支援
勤労福祉公団1588-0075簡易代払金・倒産代払金の申請
法的免責: 本記事は一般情報であり、個別の法的助言ではありません。具体的な案件は雇用労働部1350、大韓法律救助公団132、または弁護士・労務士へご相談ください。

賃金未払いはあなたの落ち度ではない。そして回収の道筋は、陳情・簡易代払金・無料訴訟まで、すでに法で敷かれている。順番に踏めばよい。

公式資料